HIPHOP STYLE GUIDE
ヒップホップダンスの種類と、始める前に見るポイント
ヒップホップは、バウンスという一本の土台から、世代ごとの質感や隣接スタイルへ枝分かれしていく系統として見ると、つながりが掴めます。
膝と重心の上下で作るバウンス(ダウン/アップ)を起点に、そこから分かれた世代の質感、隣接するストリートスタイルとの境目、世代をまたぐ基礎ステップの語彙、そして練習の組み立てまでを、動きの実体に沿って順にたどります。
この系統をたどると見えること
- ヒップホップの全スタイルは、膝と重心の上下で作るバウンス(ダウン/アップ)という一本の土台を共有します。
- 同じバウンスから、より細かくビートに乗る new school 的な質感と、大きなステップと移動を伴う old school 的な質感へ枝分かれします。
- ハウス・ロック・ポップ・ブレイキングは地続きの隣接スタイルですが、音のどこを取り、どこを止め、どこで床を使うかで線引きされます。
- ランニングマンやロジャーラビットなどの基礎ステップは世代をまたいで使われ、ダウン/アップのどちらに噛み合うかで覚えると定着します。

THE TRUNK
ヒップホップを貫く一本の土台はバウンス(ダウン/アップ)
ダウン:拍に合わせて膝を抜き、重心を下に落とす
ヒップホップの土台になるグルーヴです。拍が来た瞬間に膝の力を一度抜いて、体を軽く沈めます。下げるのは頭や肩を前に倒すことではなく、膝を緩めて重心がかかとと土踏まずの間に落ちることです。沈めたら同じ速さで戻し、次の拍でまた抜く。「沈む拍」と「戻る間」を一定に保てると、速い曲でも体が遅れにくくなります。
アップ:拍に合わせて膝を伸ばし、体を上に持ち上げる
ダウンの逆で、拍の瞬間に膝を軽く伸ばして体を上へ運びます。跳ぶのではなく、つま先で床を押して胸とみぞおちが少し上がる程度に留めます。上げきったら力を抜いて自然に戻すと、次の拍で再び上げられます。ダウンが「重く沈む」質感なら、アップは「軽く弾む」質感で、同じ曲でもノリの印象が変わります。
首・肩・胸は、膝の波が遅れて伝わった結果として動く
最初から首や胸を大きく振ろうとすると、拍とずれて見えがちです。動きの起点は膝と重心で、首・肩・胸はその波が伝わった結果として遅れて動くと自然になります。鏡の前でまず膝のダウン/アップだけを取り、慣れてから上半身を少しずつ参加させると、力みが減ります。
ダウンとアップは、同じ曲の中で切り替えて表情を出す
ダウンかアップのどちらかしかできない、という固定で考える必要はありません。同じ曲の中で、サビはダウン、Aメロはアップ、といった切り替えで表情が出ます。まずはどちらか一方を一定に保てるようにし、両方を一定に取れてから切り替えに進むと無理がありません。この一本のバウンスが、このあと出てくる全サブスタイルが共有する『幹』になります。

BRANCHING
バウンスから枝分かれした2つの大きな世代の質感
細部に乗る質感(new school 的な括り)
1990年代以降に広がった括りで、メロディやビートの細部に体を合わせる質感が中心です。アイソレーション寄りに、肩・胸・首を小さく区切って音の細かい部分に乗せたり、ヒット気味に止めたりと、体重の移動より『どこを細かく刻むか』に重心を置きます。大きく移動するより、その場でグルーヴを精密に音へ当てる方向です。
大きく動く質感(old school 的な括り)
より社会的ダンス/パーティ由来の古い世代の括りで、大きなステップとフロアの移動を伴うノリが中心です。ランニングマンのように位置や向きを変えながら拍を保ち、体重の移動そのもので音に乗ります。細かく止めるより、空間を使って大きく弾むことに重心を置く方向です。
どちらの質感も、同じバウンスの幹から枝分かれしたものです。新しい括りと古い括りの厳密な区切り年で考えるより、体重と細かさの置き場所の違いとして掴むのが実用的です。
ADJACENT STYLES
隣接するストリートスタイルとの境目(ハウス・ロック・ポップ・ブレイキング)

| スタイル | 代表技法名 | 質感の軸(音のどこを取り、止め、床を使うか) |
|---|---|---|
| ヒップホップ | バウンス(ダウン/アップ)、基礎ステップ | 膝と重心の上下を音に乗せる。床は基本的に立って使う |
| ハウス | ジャッキング(胴の波)、フットワーク、ロフティング | 速い拍に対して足を細かく入れ替える。胴を波打たせ、足元の連続性で取る |
| ロック | ロック(止め)、ポイント | 動きを急に『止める』瞬間と指差しで音を区切る。緩急のコントラストが軸 |
| ポップ | ヒット/ポップ(筋肉の収縮)、ウェーブ | 筋肉を一瞬締めて弾く硬い質感。タイトに止めることが軸(ヒップホップ本体とは別の隣接スタイル) |
| ブレイキング | トップロック、フットワーク、パワームーブ | 立ち(トップロック)から床(フットワーク・パワームーブ)へ移行する。床の使用が軸 |
STEP GLOSSARY
世代をまたいで使われる基礎ステップの語彙
ランニングマン(Running Man)
ダウンと相性その場で走っているように見せる代表的な基礎ステップです。片足を前に出して床を踏み、もう一方の足を後ろへ滑らせながら入れ替えます。動きの起点は踏む足と滑る足の重心移動で、前に進まず同じ位置に留まることがポイント。ダウンの沈みと合わせると安定します。最初は「踏む・滑る」を2拍に分けてゆっくり覚えます。
ロジャーラビット(Roger Rabbit)
ダウンと相性ランニングマンと逆で、足を後ろに蹴り上げながら入れ替える後退系のステップです。起点は後ろへ蹴り上げる足と、入れ替えで戻る重心。前進系のランニングマンとセットで覚えると、前後どちらの方向にもグルーヴを運べるようになります。最初は回数を少なめにして無理なく覚えます。
ポップコーン(Pop Corn)
アップと相性片足を軸にして、もう一方の足のつま先で小さく弾みながらステップを刻みます。起点は軸足ともう一方のつま先で押す小さな弾み。アップのグルーヴと相性がよく、軽く跳ねる質感を体で覚える練習になります。高く跳ぶ必要はなく、つま先で床を押す感覚を一定に保つことが目的です(呼び方は流派や地域で異なる口語名)。
サイドの開閉ステップ
ダウン/アップどちらにも両足のかかととつま先を交互に開閉して、横や斜めに移動するステップです。起点はかかと・つま先の交互の開閉で、膝の抜きと足首の返しを連動させるのがコツ。足だけで動かそうとすると硬くなります。前後系のステップに慣れた後の引き出しとして置くと、横方向の重心移動が増えます。
ボックスステップ(Box Step)
拍を保つ移動四角を描くように足を運ぶ移動の基礎です。起点は四角の角ごとに位置を変える足運びで、技というより空間の中で位置を変えながら拍を保つ練習に向いています。振り付けで「移動しながら踊る」場面に備えて、早い段階で触れておくと後がつなぎやすくなります。
BUILD ORDER
土台から語彙へ、足す順番で組み立てる初心者の道筋
足していく順番
1. 膝のダウン/アップだけを、曲なしで一定に取る
まず音楽を流さず、メトロノームか手拍子で膝のダウン(またはアップ)だけを繰り返します。ステップも腕も足しません。沈む深さと戻る速さが毎回同じになることが最初の目標です。これが系統の幹になります。
2. BPM90〜100の遅い曲に乗せる
BPM が遅め(90〜100前後)の曲を選び、覚えた膝の動きを拍に乗せます。速い曲は後回しにします。曲に合うと、自分の沈むタイミングが拍からずれていないかを耳で確認できます。
3. 基礎ステップを1つだけ、2拍に分けて足す
ランニングマンなど1つに絞り、「踏む・滑る」を分解してゆっくり覚えます。幹(バウンス)に枝(ステップ語彙)を1本ずつ足すイメージで、同時に複数のステップへ手を広げないことがつまずきを減らす近道です。
4. グルーヴとステップを重ねる(崩れたら膝だけに戻す)
膝のダウン/アップと、覚えたステップの重心移動を重ねます。最初は崩れて当然なので、崩れたら手順1の「膝だけ」に戻ってから組み直します。
5. 短く撮って、止まった瞬間の重心だけ確認する
スマホで10〜20秒だけ撮り、動き全体を採点せず、止まった瞬間にどちらの足へ重心が乗っているかだけを見ます。直す点を1つに絞り、次の練習に持ち越します。

よくあるつまずきと戻し方
膝を使わず、首や肩だけ振ってしまう
上半身を一度止めて、膝のダウン/アップだけに戻します。動きの起点を膝に戻すと、上半身の振りが後から自然についてきます。鏡で膝が緩んでいるかを確認します。
速い曲に合わせようとして拍より急いでしまう
曲の BPM を落とすか、半分の拍で取り直します。速さに合わせるのではなく、沈む位置と戻る位置を一定に保つことを優先します。間に合わないときは、まず1拍ごとに丁寧に取り直します。
ランニングマンで前に進んでしまう
床に目印を置いて同じ位置に留まる練習をします。前に進むのは滑る足を蹴り出しすぎているサインなので、滑る距離を短くして踏む足の真下に重心を戻します。
一度に複数のステップを覚えようとして混乱する
その週に練習するステップを1つに絞ります。新しいステップは、前のステップが曲に乗ってから足します。引き出しの数より、1つを拍に乗せきることを先にします。
力が入りすぎて、すぐ疲れて続かない
戻す動きで力を抜くことを意識します。沈む/上げるときに力を入れ、戻るときに脱力する。この緩急ができると、同じ動きでも消耗が減り、長く続けられます。
KEEP THE SYSTEM
自宅とオンラインで系統を体に残す続け方
自宅練習チェックリスト
- 全身が映る鏡か、スマホを立てかけて自分の膝と重心を確認できる定位置を1つ決める
- 毎回フルで踊らず、5分で「膝だけ」「ステップだけ」と区切って練習する
- ライブレッスンで感覚をつかんだら、受講したレッスンのアーカイブで同じ箇所を0.5倍速で見返す
- 動画は等速で追わず、止まった瞬間の重心移動を確認する
- 分からない動きを1つに絞り、次のライブレッスンで聞ける形にメモしておく

土曜10:30のライブレッスンを週の軸にする続け方
- 専門技を一気に増やすより、週の軸として系統(幹と枝)を体に残したい
- ライブレッスンで感覚をつかみ、受講したレッスンのアーカイブで同じ箇所を見返したい
- バウンスの土台と基礎ステップを、自宅で短く区切って確かめたい
- 分からない動きを1つに絞り、公式LINEや次のライブレッスンで聞ける形にしておきたい
NEXT STEP
バウンスの土台から、一つ試してみる
ヒップホップを調べ続けるより、まずは膝のダウン/アップを一定に取り、基礎ステップを1つだけ乗せる方が、系統が体に残りやすくなります。